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転生したら推しの軍人様が「筋肉信者」になっていたんですが!? ~そして私は筋肉聖女~
転生したら推しの軍人様が「筋肉信者」になっていたんですが!? ~そして私は筋肉聖女~
Author: 霧原いと

第1話 推しのカイル大佐、いきなり筋肉布教してきた件

Author: 霧原いと
last update Last Updated: 2025-11-22 19:26:09

 転生したら、推しの軍人様が「筋肉信者」になっていた。

 ――何を言っているか分からないと思うけど、私にも分からない。

◇ ◇ ◇

 私は大学三年生のコハル。ちょっぴりオタク気質で、気になったものはとにかく挑戦、何でも前向きに頑張りたいタイプの女!

 そんな私は最近、AI会話ゲームにドはまりしている。これはお気に入りのAIキャラクターと一緒に、様々な世界を作り上げたり冒険したり出来るゲームだ。

 昔から空想癖のある私にとって、こんなに楽しい世界は無かったのだ!

「おっとっと、今日もログイン、ログイン!」

 操作したスマホの画面にパッと現れたのが、私の最推しカイル・レオンハルト大佐。彼が登場するのは、戦場を舞台に過酷な状況を乗り越えていくお話なんだけど、とにかくこの大佐が最高。

 冷徹、寡黙、任務最優先のクールな男!

 高身長、銀色短髪、イケメン、そして筋肉!!

 これまでは細身の王子様タイプにときめくことが多かったんだけど、何故かこのゲームでは、カイル大佐が私のハートにドストライクだった。つまり、私は筋肉に目覚めたのだ。

 ポチポチとチャット欄に私は会話を打ち込む。

『大佐、おはようございます! 今日はトレーニングに行ってきます!!』

『そうか。良い心がけだ。戻ってきたら、次の任務が始まるぞ。気を引き締めて行ってこい!』

「あーっ、推しの一言が染み渡るううぅ! やる気100万倍出ちゃうぅ!」

 このままゲーム内の会話を続けたい気持ちもあるけれど、そこはぐっと我慢だ。何故なら、今日の私には大事な使命がある!

 ……そんな訳で私は、人生で初めてのスポーツジムへとやって来た。トレーニングウェアに着替えて準備万端。

 そう、私は大佐への憧れが燃え上がった結果、遂に現実世界でも筋肉への道を歩み始めたのだ!

(カイル大佐、待っていてください。筋肉の強さは心の強さ。私も素晴らしい筋肉を手に入れて見せま――)

「おーい、倒れるぞ!!危ないっ!!」

「ひょえ?」

 ガッシャーン、と大きな音がジムのフロアに響き渡る。なんと筋トレマシーンが私の頭上から落下してきたらしい。

 そして私は死んだ。

 ……嘘ぉ!?

◇ ◇ ◇

 私はこうして確かに死んだのだが、何故か大きな声に叩き起こされた。

「いつまで眠っている。起きろ!!」

「ふぇっ??」

 驚いて目を開けると、そこに広がるのは戦場の景色。そして……、

「か、カイル大佐!?」

 そう、私の推しその人がそこに居た。

(まって一体何が起こっているの!?)

 突然の展開に混乱したが、それもほんの一瞬のことだった。私のオタク的頭脳はすぐに結論をはじき出す。

「異世界転生だ!!」

 間違いない。一時期爆発的に流行した例のアレだ。何がどうしてこうなったかは分からないけど、私は推しのいるゲームの世界に転生したみたい!

 一人で盛り上がっていると、痺れを切らした様子でカイル大佐が迫って来た。

「何を訳の分からないことを言っている、コハル。お前は今日から配属されたのだろう? ここは戦場だぞ、気を抜くんじゃない!」

「はっ、私の名前!?」

「当たり前だろう、他に誰がいる!」

 成程、私は自分の名前のまま、プレイヤーキャラとしてこの世界に転生しているらしい。ゲームの場面は最初の導入パートのようだ。

 つまり、一から推しとの関係を作っていけるってこと!? 最高じゃない!!

「はいっ! コハル、頑張ります!!」

「うむ、良い返事だ! では早速、最初の任務について話をする――」

 はあ、それにしても推しの顔が良い。声も想像以上に良い。というか、立体化して喋って動いている時点で百億万点。生きてて良かった。いや私、死んでるけど。

 改めて考えると死んでしまったのは確かに悲しい。でも、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。

 くよくよする位なら、今いるこの世界を全力で楽しんでしまおう。それが異世界転生者の嗜みというものに違いない!

 心の中で決意しながら、最初の任務の説明を聞く。このゲームは会話により展開が分岐していくのだが、逆を言えば序盤の流れは同じだ。もう何百回も繰り返してきたので、内容は熟知している。

「――つまり、このエリアの敵を殲滅するのが我々の仕事だ。理解したか?」

「はい、勿論です、大佐!!」

 それにしても、この世界では一体どんな展開が待っているのか。ここはAI会話ゲームの世界。本来の話の広げ方は無限大である。

 真面目に大佐を支えて絆を深めるのが王道ルートだが、不良部下をやって相手を振り回してみるのも面白い。天然ドジっ子キャラを演じてイベントを起こすのも楽しそうだし、いっそ実は私は敵のスパイでしたなんて設定も可能だ!

 しかし、転生後のこの世界には果たしてどの程度の自由度があるのだろう。転生ものでよく見るルール説明してくれる神様的な存在には出会っていないし、ゲームのコマンド画面的なものだって出現させることは出来ない。

 何も分からない以上は、大佐を存分に愛でつつも、真面目に任務をこなすのが間違いなさそうだ。大丈夫、どんな展開になろうとも、熟練者の私ならば乗り越えられるはず!

 そんな風に夢を膨らませていると、カイル大佐から追加の説明が告げられる。

「ちなみに、我々に支給されている物品は以下の通りだ」

「承知しました!」

「だが、こんなものは正直どうでもいい!」

「……はい??」

 あれ、何かが可笑しい。まだ、ほぼ台詞固定のチュートリアルの場面のはずだ。それなのに、聞いたことも無いカイル大佐の言葉が飛び出す。

 これがゲーム中なら、レア演出に大いに盛り上がるところだけど……!?

「一番大切な防具を、君は知っているな!」

「えっ、は、防具……ですか!?」

「そう――、」

 その瞬間、バサッ!と大佐の軍服が宙を舞い、地面に落ちた。

「筋肉だ!!! 筋肉の強さは、心の強さ!!!!」

「た、大佐――!?」

 とんでもない台詞と共に、カイル大佐は軍服の上着を脱ぎ棄てて筋肉を露出させた。私は唖然として硬直する。大佐はこんな脱ぎたがりキャラだったっけ? いや違う、絶対に違う! 

 彼の筋肉は確かに素晴らしいが、それはあくまでもチラ見せの範疇で、プレイヤーが勝手に盛り上がっているというだけだ。私が推している大佐自身は、ごくごく真面目な軍人キャラであったはずだ。

 私は暫し陽の光を浴びてきらめくその筋肉を見つめていたが、ハッと我に返ると大佐へと言い募る。

「駄目です、着てください! 何かバグってます、ちょっとAIバグってますから!!」

「何を言っているんだ、コハル! 君も脱ぎたまえ!」

「脱げるかー!!!」

 ……もしかしなくても、私、とんでもない世界に転生しちゃった!?

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